藤代圭一氏による本書『「しつもん」で夢中をつくる! 子どもの人生を変える好奇心の育て方』は、子どもの可能性を最大限に引き出すために、大人がどのように子どもと向き合えばよいかを示した一冊です。著者は、子どもの好奇心こそが成長の原動力であり、それを育むことが子育てや教育の要であると主張します。
本書の特徴は、単なる理論にとどまらず、具体的な「しつもん」の方法や、実践例を豊富に盛り込んでいる点です。著者自身の経験や、各界の第一人者の言葉を織り交ぜながら、読者に分かりやすく、かつ説得力のある形で内容が展開されています。
好奇心が生み出す力
著者は、好奇心が子どもたちに7つの力を育むと説明しています。
1. 物事に進んで取り組む力
2. 疑問を持つ力
3. 働きかける力(協働)
4. 伝える力(発信力)
5. 聞く力(傾聴力)
6. やり抜く力
7. 考え抜く力
これらの力は、単に学業や特定のスキルの向上だけでなく、人生全般において必要不可欠なものです。著者は、好奇心を持つことが、子どもたちの生きる力そのものを育むと強調しています。
好奇心の3段階
本書では、好奇心には3つの段階があると説明されています。
1. 「へえ!」「わあ!」- 価値や興味を感じる段階
2. 「やりたい!」「知りたい!」- 自分で体験する段階
3. 「もっと知りたい!」- 知的好奇心へ発展する段階
著者は、子どもたちがこれらの段階を順に経験することで、好奇心が深まり、自主性や主体性が育つと説明しています。大人の役割は、この過程をサポートし、時には適切な「しつもん」をすることで、子どもの好奇心を引き出し、育てることだと述べています。
「しつもん」の力
本書のタイトルにもなっている「しつもん」は、著者が提唱する子どもの好奇心を引き出すための重要なツールです。著者は、単に質問をするのではなく、子どもの思考を促し、自ら答えを見つけ出す力を養う「しつもん」の重要性を強調しています。
例えば、「どうしてそう思うの?」「もし〇〇だったらどうする?」といった開かれた質問を投げかけることで、子どもの思考力や創造力を刺激することができると説明しています。
著者は、「しつもん」を活用する際の3つのルールも提示しています。
1. どんな答えも正解
2. わからないも正解
3. 相手の答えを受け止める
これらのルールを守ることで、子どもが安心して自分の考えを表現できる環境が作られ、好奇心が育つ土壌が整うと著者は主張しています。
大人の役割 – 好奇心を育てる9つのルール
著者は、子どもの好奇心を育てるために大人が心がけるべき9つのルールを提示しています。
1. 好奇心の芽を摘まない
2. 大人の都合で奪わない
3. 本物に触れる機会を用意する
4. 自分で学ぶ経験をつくる
5. 一緒に探究する
6. 失敗を受け止める
7. 信じる(すぐに結果を求めない)
8. 今、この瞬間を楽しむ
9. 自分の好奇心も大切にする
これらのルールは、子どもの好奇心を尊重し、それを育む環境を作るための具体的な指針となっています。著者は、大人自身が好奇心を持ち続けることの重要性も強調しています。
変化する社会と好奇心の重要性
本書では、AI(人工知能)の発達や急速な技術革新により、社会が大きく変化していくことが予測されると述べられています。そのような中で、著者は、IQ(知能指数)やEQ(共感指数)に加えて、CQ(創造的指数)の重要性が増していくと指摘しています。
CQは好奇心と密接に関連しており、新しい視点から創造する力を表します。著者は、これからの時代を生きる子どもたちにとって、CQを高めることが非常に重要だと主張しています。
好奇心を引き出す具体的な方法
本書では、子どもの好奇心を引き出すための具体的な方法がいくつも紹介されています。例えば、
– 遊びから始める
– ストーリーを伝える
– さまざまな体験をつくる
– バーチャルとリアルを近づける
– 追体験の機会をつくる
– 新しい情報を与える
– 「自分だったら?」と置き換えてみる
– 子どもに教えてもらう
などです。これらの方法は、日常生活の中で実践できるものばかりで、読者にとって非常に参考になるでしょう。
大人自身の好奇心を取り戻す
著者は、子どもの好奇心を育てるためには、大人自身が好奇心を持ち続けることが重要だと説いています。本書では、大人が好奇心を取り戻すための3つの方法が紹介されています。
1. 「なぜ?」と問いかける
2. 自分を満たす(シャンパンタワーの法則)
3. 変化を取り入れる
これらの方法を実践することで、大人自身が好奇心旺盛になり、それが子どもたちにも良い影響を与えると著者は主張しています。
おわりに- 今を楽しむことの大切さ
本書の結論として、著者は「今を楽しむ」ことの重要性を強調しています。子どもたちは現在を生きており、大人が考える「将来のため」という発想とは異なる時間軸で物事を捉えています。著者は、子どものペースに合わせ、今この瞬間を全力で楽しむことが、結果的に子どもの好奇心を育み、健全な成長につながると述べています。
本書は、子育てや教育に携わる全ての大人に向けた、実践的で示唆に富んだガイドブックとなっています。著者の経験に基づいた具体的なアドバイスや、様々な専門家の知見を織り交ぜた内容は、読者に新たな視点を提供し、子どもたちとの関わり方を見直すきっかけを与えてくれるでしょう。
子どもの可能性を信じ、その成長を見守る大人の姿勢が、子どもたちの好奇心を育み、豊かな人生の基盤を作るという著者のメッセージは、非常に説得力があります。本書は、子どもたちの輝かしい可能性を引き出すための重要なヒントに満ちた、価値ある一冊だと言えるでしょう。