アクティブラーニング型授業としての反転授業[実践編]

本書『アクティブラーニング型授業としての反転授業[実践編]』は、近年、高等教育機関を中心に注目されている教育手法である「反転授業」の実践的な導入を支援するガイドブックです。 自然科学、人文社会科学、情報科学、生物学、教職課程、そして大学教育全般 と、幅広い分野における反転授業の導入事例を紹介している点が最大の特徴です。それぞれの事例では、「なぜ反転授業を取り入れることにしたのか」「どのような授業デザインにしたのか」「学生の反応はどうだったのか」といった具体的なプロセスが詳細に記述されています。

反転授業とは:従来型授業の課題を克服する新たな教育スタイル

従来型の授業は、教員が一方的に知識を伝達するスタイルが一般的でした。しかし、このような授業形態は、学生の受動的な学習を招き、学習内容の定着率が低いという課題がありました。また、学生一人ひとりの学習スピードや理解度に合わせたきめ細やかな指導が難しいという側面もありました。

こうした従来型授業の課題を克服するために注目されているのが、反転授業 です。反転授業とは、「授業時間内に知識伝達を行う従来型授業に対して、事前に自宅で授業内容を学習し、授業時間内は演習やグループワークなど、学生が主体的に参加する活動を行う授業形態」のことを指します。

なぜ反転授業が効果的なのか?: 主体的学習を促進し、深い学びを実現

反転授業は、従来型授業では難しかった、学生の主体的な学習を促進 する効果があります。事前に教材を学習しておくことで、学生は自分のペースで繰り返し学習 することができます。また、事前に疑問点を明確にしておくことで、授業時間内での議論をより活発にする ことができます。

さらに、教員と学生、そして学生同士の相互作用を生み出す ことによって、深い学びへと繋がる効果も期待できます。

本書の構成: 多様な分野における実践事例から具体的な導入プロセスを学ぶ

本書では、第1部「自然科学分野における反転授業」から第3部「特定分野における反転授業」まで、合計15の異なる分野における反転授業の事例 が紹介されています。各章は、大学教員による実践報告という形で構成されており、具体的な授業設計から、授業実施後の学生の反応、そして今後の課題まで が詳細に述べられています。

以下に、本書で紹介されている事例の一部を具体的に見ていきましょう。

[事例1] 「化学」の講義における反転授業

  • 目的: 学生の能動的な学習を促すために反転授業を導入。
  • 授業デザイン: 1コマ90分の授業を10-15分の「事前学習ビデオ」と10分の「確認テスト」による授業とアクティブラーニング形式の「演習」で構成。
  • 成果: 反転授業導入により、学生の理解度が向上し、授業に対するモチベーションも高まった。

[事例2] 「情報科学」の講義における反転授業

  • 目的: 段階的な進化で反転授業を導入。
  • 授業デザイン: 従来の講義形式にICTを導入し、学生の反応を見ながら反転授業へ移行。
  • 成果: 学生の理解度や授業への参加意欲が高まった。

[事例3] 「教職課程」の講義における反転授業

  • 目的: 新入生に大学での学び方、とくに協調学習や能動的な学習への参加を促す。
  • 授業デザイン: グループワーク形式を採用し、事前に動画教材を視聴させておく。
  • 成果: 反転授業導入により、新入生の協調学習への参加意欲が高まった。

[事例4] 「大学院」の講義における反転授業

  • 目的: チーム医療スキルの習得
  • 授業デザイン: 講義形式のeラーニングを事前に受講させ、演習形式のグループワークを対面で行う。
  • 成果: 学生のコミュニケーション能力や問題解決能力の向上に効果が見られた。

これらの事例からわかるように、本書では文系・理系を問わず、様々な科目において、どのように反転授業をデザインし、実践すればよいのか を具体的に学ぶことができます。

反転授業導入にあたって: 教員の心構えと本書の活用法

本書は、反転授業の導入を検討している教員にとって、実践的な知識やノウハウを得るための必読書 と言えます。それぞれの事例は、成功談だけでなく、課題や反省点についても率直に語られており、反転授業導入におけるリアルな状況 を知ることができます。

本書を読むことで、読者は以下の3点を学ぶことができます。

  1. 反転授業の基礎知識: 反転授業の基本的な考え方、メリット・デメリット、具体的な授業デザイン、そして導入に向けた準備など、反転授業に関する基礎知識を学ぶことができます。
  2. 多様な分野における実践例: 自然科学から人文社会科学、情報科学、そして大学教育全般まで、幅広い分野における反転授業の実践例を学ぶことができます。
  3. 反転授業を成功させるためのヒント: 実際の授業で起こりうる問題点やその解決策、効果的な教材作成方法、そして学生のモチベーションを高めるための工夫など、反転授業を成功させるための具体的なヒントを学ぶことができます。

本書は、反転授業に関心のあるすべての大学教員におすすめ します。特に、

  • 従来型の授業スタイルに限界を感じている方
  • 学生の主体的な学習を促進したいと考えている方
  • 学生の理解度を高め、深い学びを実現したいと考えている方

は、本書から多くの示唆を得られるはずです。

反転授業は、従来型授業の課題を克服し、学生の主体的な学びを促進するための有効な手段 と言えます。本書を手に取り、実践的な知識やノウハウを学ぶことで、より効果的な授業作りを目指しましょう。

By 吉成 雄一郎

東海大学教授。コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ(英語教授法)、信州大学大学院工学研究科(情報工学)修了。東京電機大学教授を経て現職。専門は英語教授法、英語教育システム開発。 さまざまな英語学習書、英検、TOEIC 対策書、マルチメディア教材等を手がけてきた。英語e ラーニングや英語関係の教材・コンテンツの研究開発も行う。全国の大学、短期大学、高専等で使われているe ラーニングシステム「リンガポルタ」も開発した。最近ではAI による新しい教育システムの開発にも着手している。