はじめに

Huang、Chen、Luo(2021)は、論文「モバイルアシスト型または紙媒体での読解:外国語としての英語の読解力に与える影響」の中で、大学生における英語学習における読解媒体の影響について調査しました。 この論文は、英語を外国語(EFL)として学ぶ大学生におけるモバイルアシスト型読解紙媒体での読解の効果を比較した実証研究です。近年、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器の普及に伴い、教育現場、特にEFL学習において、これらの機器がどのように活用されているか、そして学習成果にどのような影響を与えるかについて関心が高まっています。

本研究は、中国の都市部の大学に通う107名のEFL学習者を対象に、読解力、読解速度、学習方略の使用という3つの観点から、モバイルアシスト型読解と紙媒体での読解を比較しました。 具体的には、参加者は2つの異なる英語のテキストを読み、それぞれ読解力テストを受け、読解にかかった時間を測定しました。 また、モバイルアシスト型読解と紙媒体での読解において、どのような学習方略を用いたかを評価するための質問紙と、両方の読解方法に対する認識を調査するためのアンケートにも回答しました。

主な結果は以下の通りです。

  • 読解力: モバイルアシスト型読解と紙媒体での読解において、参加者の読解力に有意な差は見られませんでした。
  • 読解速度: 参加者は、紙媒体での読解と比較して、モバイルアシスト型読解において有意に遅い読解速度を示しました。
  • 学習方略: 参加者は、モバイルアシスト型読解において、語彙の検索、テキストの翻訳、テキストへの注釈付けなどのサポート戦略をより多く使用したと認識していました。
  • 認識: 全体として、参加者はモバイルアシスト型EFL読解に対して肯定的な認識を示し、特にその携帯性と利便性を高く評価していました。 しかし、画面のサイズが小さく、気が散る要素があるなど、モバイルアシスト型読解のいくつかの欠点も指摘されました。

結果の詳細

読解力

  • モバイル機器で読解したグループと紙媒体で読解したグループの間に、読解力の有意な差は見られませんでした。 これは、読解媒体がEFL学習者の読解力の習得に大きな影響を与えないことを示唆しています。

読解速度

  • 参加者は、モバイル機器で読む場合、紙媒体で読む場合よりも有意に時間がかかりました。 これは、モバイル機器の画面の小ささ、スクロールの必要性、気が散る要素などが原因として考えられます。

学習方略

  • 参加者は、モバイルアシスト型読解において、辞書や翻訳ツールなどのデジタルツールを利用できるため、語彙を調べたり、テキストを翻訳したり、テキストに注釈をつけたりするなど、より多くのサポート方略を用いることがわかりました。

モバイルアシスト型読解に対する認識

  • 多くの参加者は、モバイルアシスト型EFL読解は便利で柔軟性が高いと考えていることがわかりました。 モバイル機器は持ち運びが簡単で、いつでもどこでも英語のテキストを読むことができるため、学習の機会が増えます。

考察

本研究の結果は、EFL教育者、教材開発者、政策立案者にとって重要な意味を持ちます。

  • モバイルアシスト型読解は、EFL学習者の読解力を高める上で、紙媒体での読解に代わる実行可能な選択肢となりえます。
  • EFL教育者は、モバイル機器での読解に関連する潜在的な欠点、例えば読解速度の低下や気が散る要素などに対処する必要があります。
  • EFL学習者がモバイルアシスト型学習環境を最大限に活用できるように、教材開発者は、語彙検索ツール、翻訳機能、注釈付けツールなどのサポート方略を組み込んだデジタル教材やリソースを設計する必要があります。
  • 政策立案者は、EFL学習におけるモバイル機器の利用を促進し、すべての学習者がこれらの機器やリソースにアクセスできるようにする必要があります。

本研究の限界と今後の研究方向

本研究は、EFL学習におけるモバイルアシスト型読解と紙媒体での読解の影響について貴重な知見を提供していますが、いくつかの限界があります。

  • 参加者の背景: 本研究の参加者は、特定の文化的および教育的背景を持つ大学生に限定されていました。そのため、研究結果は他の学習者集団に一般化できない可能性があります。
  • 使用したテキスト: 本研究で使用したテキストは、種類や難易度が限られていました。異なる種類や難易度のテキストを使用した今後の研究では、結果が異なる可能性があります。
  • 長期的な影響: 本研究は横断的なものであり、モバイルアシスト型読解と紙媒体での読解の長期的な影響を調査していません。モバイルアシスト型読解と紙媒体での読解が、学習者の読解力、読解方略、学習に対するモチベーションに及ぼす長期的な影響を調査するために、長期的な研究が必要です。
  • 技術の進歩: モバイル機器やアプリケーションは常に進化しています。今後の研究では、最新の技術の進歩を考慮し、EFL学習における新しいモバイルアシスト型読解アプリケーションの影響を調査する必要があります。
  • 学習者の多様性: EFL学習者は、学習スタイル、好み、能力において多様です。今後の研究では、学習者の多様性を考慮し、モバイルアシスト型読解が異なる学習者のニーズにどのように対応できるかを調査する必要があります。

これらの限界にもかかわらず、本研究は、EFL学習におけるモバイルアシスト型読解の理解に大きく貢献しています。本研究の結果は、EFL教育者、教材開発者、政策立案者にとって重要な意味を持ち、将来の研究に役立つ貴重な洞察を提供しています。


Huang, Z., Chen, G. & Luo, S. (2021). Mobile-assisted or paper-based? The influence of reading medium on college EFL learners’ reading comprehension, reading speed and reading strategies. Computer Assisted Language Learning, 34(5), 219–243.
https://doi.org/10.1080/09588221.2021.2012200

 

By 吉成 雄一郎

東海大学教授。コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ(英語教授法)、信州大学大学院工学研究科(情報工学)修了。東京電機大学教授を経て現職。専門は英語教授法、英語教育システム開発。 さまざまな英語学習書、英検、TOEIC 対策書、マルチメディア教材等を手がけてきた。英語e ラーニングや英語関係の教材・コンテンツの研究開発も行う。全国の大学、短期大学、高専等で使われているe ラーニングシステム「リンガポルタ」も開発した。最近ではAI による新しい教育システムの開発にも着手している。