研究の出発点と筆者たち

この論文”Reading differently with ChatGPT: EFL learners’ use of Question-Answer Relationship strategy”は、北京郵電大学のLu Zhangを中心とした国際的な研究チームによるものです。共著者にはビクトリア大学(オーストラリア)のMeixia Xu、グラスゴー大学のYuhan Huang、マカオ都市大学のYi Huang、そして北京郵電大学のGuoxiu WangとXuantong Shenが名を連ねています。特に注目すべきは、この研究が単なる技術検証ではなく、実際の教育現場で学生たちがどのようにAIツールと向き合い、学んでいくのかという生の声を丁寧に拾い上げた質的研究である点です。

Lu Zhangは国際中国語教育やコンピュータ支援型の第二言語習得を専門としており、この研究は「学術英語の談話理解に基づくオンライン仮想コンテキスト学習体験と評価」という大型プロジェクトの一部として実施されました。中国教育部の人文社会科学研究計画青年基金や中国奨学評議会からの資金援助を受けた本格的な研究です。

読解という難題―外国語学習者が直面する壁

私たちは母語で文章を読むとき、あまり意識せずにスラスラと内容を理解できます。しかし外国語となると話は別です。まるで霧の中を手探りで進むような感覚になることがあります。この研究が扱うのは、まさにそうした困難に直面する中国の大学生たちです。

外国語としての英語(EFL)の読解には、語彙の知識、文法構造の理解、背景知識の活用、そして戦略的な読み方など、多層的なスキルが求められます。例えば、難しい単語に出会ったとき、どう対処すればよいでしょうか。辞書を引く、文脈から推測する、あるいは飛ばして読み進める。それぞれの選択が理解の質を左右します。さらに、複数の段落にまたがる情報を統合したり、著者の意図を読み取ったりするには、単なる言語知識を超えた高度な認知プロセスが必要です。

従来の教室では、教師が個々の学生の理解度に応じて即座に支援を提供することは、時間的にも物理的にも困難でした。35人の学生がいれば35通りの理解度があり、それぞれが異なる箇所でつまずきます。ある学生は語彙で、別の学生は文構造で、また別の学生は論理展開で悩んでいるかもしれません。この多様性に対応しようとすると、教師一人の力では限界があります。

QAR戦略という読解の地図

ここで登場するのが、Taffy E. Raphaelが1986年に開発したQAR(Question-Answer Relationship)戦略です。これは読解を体系的に支援するための枠組みで、質問を4つのタイプに分類します。

「Right There」は、答えがテキスト中に明示的に書かれている質問です。例えば「主人公の名前は何ですか」のような、探せば見つかる情報です。まるで宝探しゲームのように、テキストの中から該当箇所を見つけ出す作業になります。

「Think and Search」は、テキストの複数箇所から情報を集めて統合する必要がある質問です。「主人公の性格はどのように変化しましたか」といった問いには、物語の異なる場面から証拠を集め、それらをつなぎ合わせる必要があります。パズルのピースを組み立てるような作業だと言えるでしょう。

「Author and You」は、テキストの情報と読者自身の知識を組み合わせて推論する必要がある質問です。「著者がこの比喩を使った意図は何ですか」のような問いには、テキストを読み解くだけでなく、文学的技法や文脈についての理解が求められます。

最後の「On Your Own」は、テキストとは独立して、読者自身の経験や知識に基づいて答える質問です。

この研究では、最初の3つのタイプに焦点を当てています。これらは読解の階層構造を表しており、表層的な理解から深い解釈へと段階的に進んでいく道筋を示しています。

ChatGPTという新しい学習パートナー

2022年末に登場したChatGPTは、教育の世界に大きな波紋を投げかけました。この研究が行われたのは2024年で、すでにChatGPTは広く知られていましたが、実際の教育現場でどう活用できるかについては、まだ多くの疑問が残されていました。

研究チームは、ChatGPTを単なる答え提供マシンとしてではなく、学生と対話しながら思考を促す「読解コーチ」として位置づけました。これは重要な視点の転換です。学生がChatGPTに質問をぶつけ、その回答を批判的に検討し、さらに追加の質問をする。こうした双方向のやり取りを通じて、学生は自分の理解を深めていくのです。

研究の実際―35人の学生たちの声

この研究には、中国北部の大学の1年生35人が参加しました。彼らの多くは、英語の読解力がTOEFLの基準で中級から中上級レベルで、生成AIについての知識はほとんどありませんでした。つまり、ごく普通の大学生たちです。

研究の進め方は、実践的かつ丁寧に設計されていました。学生たちは5週間にわたって、毎週40分の読解セッションに参加しました。まずTOEFLスタイルの読解問題を解き、次に自分でQAR型の質問を5〜10個作成します。そして同じテキストをChatGPTに入力し、AIにも質問を作らせます。学生は自分の質問とChatGPTの質問を比較し、改善案を考えます。さらに、ChatGPTと自由に対話し、不明確な点を質問したり、論理を比較したり、時には回答に異議を唱えたりすることが奨励されました。

研究チームは、3回の半構造化インタビュー(1回約20分)を通じて学生の体験を深く掘り下げました。合計105回のインタビューが実施され、すべて録音・文字起こしされました。インタビューは学生の母語である中国語で行われ、後に英語に翻訳されました。この言語面での配慮は、学生が自分の経験を正確かつ自然に表現できるようにするための重要な工夫でした。

第一段階―細部に目が届くようになる

インタビューから浮かび上がってきた最初の発見は、「Right There」レベルの質問を通じて、学生たちが文章の細部に注意を払うようになったという点です。

参加者5番の学生は、こう語っています。「ChatGPTの質問は非常に具体的で、記事の原文の語句がそのまま使われていることがありました。それで、その細部を本当に理解しようと努力するようになったんです。時々は自力で答えられましたが、分からない単語や表現があると答えられませんでした。辞書を引くこともありましたし、ChatGPTに翻訳してもらうこともありました」

この証言から分かるのは、学生が受動的に読むのではなく、能動的に言語の細部を観察し始めたということです。まるで顕微鏡で標本を見るように、テキストの一語一語に目を凝らすようになったのです。

参加者21番の学生は、辞書との比較でChatGPTの利点を指摘しています。「辞書と比べて、ChatGPTの語彙翻訳の方が便利です。与えられた意味を文脈に入れると、より滑らかに読めます。さらに質問を続けると、記事の文脈に関連したより多くの説明をしてくれます」

これは重要な観察です。従来の辞書は語彙の定義を列挙しますが、どの意味がその文脈で適切かを判断するのは学習者自身です。一方、ChatGPTは文脈を考慮した説明を提供できます。例えば「run」という単語には「走る」「経営する」「流れる」など多様な意味がありますが、ChatGPTは文脈から最も適切な意味を提示できるのです。

参加者8番の学生は、長く複雑な文の理解にChatGPTが役立ったと述べています。「長くて難しい文について、ChatGPTはその一部だけに焦点を当てた質問をしてくれました。最初は文が長く、構造が複雑で意味が分かりませんでした。答えようとして間違えると、説明してくれました」

英語の学術テキストには、40語を超える複雑な文が珍しくありません。関係代名詞が入れ子になっていたり、挿入句が多用されていたりすると、文の主語と動詞を見失ってしまいます。ChatGPTは文を管理可能な部分に分割し、段階的に理解を促すことで、こうした困難を軽減したのです。

第二段階―点を線でつなぐ

学生たちが表層的な理解に慣れてくると、次第に「Think and Search」レベルの質問に取り組むようになりました。このレベルでは、テキストの異なる部分から情報を集めて統合する必要があります。

参加者19番の学生の証言が印象的です。「ChatGPTの質問の中には、自分だけでは完全に答えられないものがありました。要約が必要なものです。私は先に自分で答えを書いて、それからChatGPTがどう答えるか見て比較しました。ChatGPTの答えは、より簡潔で要約的でした」

この学生は、自分の答えとChatGPTの答えを比較するという、メタ認知的な活動に従事しています。これは、単に正解を得ることよりもはるかに価値のある学習プロセスです。なぜ自分の答えが冗長なのか、どうすればより簡潔に要点を捉えられるのかを考えることで、深い学びが生まれます。

同じ学生は続けて語ります。「以前は、原文の文章をそのまま使って答えようとしていました。でもChatGPTとのやり取りの後、より概括的な言葉で記事を説明できるようになりました。例えば、第1段落と第2段落が主に何について述べているのか、自分の言葉で要約できるようになりました」

これは重要な転換点です。テキストからの引用は、理解の証明としては不十分です。真の理解は、内容を自分の言葉で言い換えられるかどうかに表れます。まるで料理のレシピを覚えるのと、実際に料理できることの違いのようなものです。

参加者11番の学生は、論理の流れを理解できるようになったと述べています。「最初に読んだときは曖昧で、何が起こったのか大体しか分かりませんでした。でもChatGPTとの質疑応答の後、細部がより明確で整理されたものになりました。出来事の順序や因果関係が理解できるようになったんです」

これは、断片的な読みから一貫した理解への移行を示しています。点と点がつながって線になり、線が集まって面になる。テキストを全体として捉える能力が育ってきたのです。

第三段階―著者の意図を読み解く

最も高度なレベルの「Author and You」質問では、学生たちは推論、解釈、批判的思考を求められます。これは多くのEFL学習者にとって最大の難関です。言語的な制約に加えて、文化的・修辞的な慣習の違いが理解を妨げるからです。

参加者12番の学生は、こう振り返ります。「最初に読んだとき、全体的に肯定的か否定的かは大体判断できました。でもChatGPTとの質疑応答の後、その肯定的なトーンがどのように作られているのか、どんな語句や文型を通じて実現されているのかが分かるようになりました」

これは大きな飛躍です。トーンを感じ取ることと、そのトーンがどのように構築されているかを分析することは、全く異なるレベルの読解です。例えば、ある批評記事が映画を否定的に描いている場合、それは直接的な否定語だけでなく、皮肉、引用符の使い方、形容詞の選択など、様々な修辞技法によって達成されます。

参加者33番の学生は、さらに深い気づきを語っています。「この質問形式―自分で答えを出し、ChatGPTの助けも得られる形式は、記事がどのように形成されるかをより深く理解するのに役立ちました。著者が自分の意見、態度、意図を異なる執筆手法を通じてどのように伝えるかが分かりました。最終的には、記事について自分自身の見解を形成できるかもしれません」

この証言は、学習者が単なる受動的な読者から能動的な意味構築者へと変容したことを示しています。テキストを解読するだけでなく、それがどのように構築されているかを理解し、さらには自分の立場を形成する。これこそが、批判的読解の本質です。

しかし万能ではない―学生が感じた限界

研究チームは、ChatGPTの利点だけでなく、その限界についても正直に報告しています。この透明性は、研究の信頼性を高める重要な要素です。

参加者20番の学生は、多義語の扱いについて不満を述べています。「意味が複数ある単語の場合、直接意味を尋ねると、すべての関連する意味を与えてくれないことがあります。あるいは、与えられた意味を文に入れてもしっくりこないことがあります。その単語が含まれる文を与える必要があります。そうすると良くなります」

これは、AIとの効果的な対話には学習が必要だということを示しています。適切な質問の仕方を学ぶことも、AIを使う上での重要なスキルなのです。

参加者25番の学生は、長文の構文分析について指摘しています。「長くて複雑な文の分解と説明が不明確なことがあります。文が少し長め―例えば20語を超えると、混乱してなぜそのように分解したのか明確に説明してくれません」

これは、ChatGPTの構文解析能力の限界を示しています。人間の教師なら、なぜそのように文を区切ったのか、主語と動詞の関係はどうなっているのかを直感的に説明できますが、AIはそうした説明に苦労することがあるのです。

参加者28番の学生は、要約の質について言及しています。「要約を求める質問に対して、テキストから長い部分をそのままコピーすることがあり、あまり簡潔ではありません。私は自分でもう一度要約し直します」

これは興味深い観察です。学生たちは、ChatGPTの出力を盲目的に受け入れるのではなく、批判的に評価し、必要に応じて改善していました。AIは完璧な教師ではなく、時には不完全な回答を出すパートナーなのだと理解していたのです。

参加者31番の学生は、推論の論理について疑問を呈しています。「推論を必要とする質問に対する回答は、私たちの期待と異なることがあります。回答と説明が必ずしも正確ではなく、論理が明確に説明されていません」

これは、AIの「ブラックボックス」問題を指摘しています。ChatGPTがどのようにして特定の結論に達したのか、その推論プロセスが不透明なため、学習者は回答の妥当性を判断しにくいことがあります。

研究方法の強みと弱み

この研究の最大の強みは、学習者の生きた体験を丁寧に聞き取った点にあります。105回ものインタビューを通じて、35人の学生それぞれの声を拾い上げました。数字やテストスコアだけでは見えてこない、学習プロセスの質的な変化が浮き彫りになっています。

研究チームは、質的研究の標準的な手法であるRitchieとSpencerの枠組みに従ってデータを分析しました。まず全体を読み込み、テーマの枠組みを作り、それに基づいてコーディングを行う。そしてチームメンバー間で繰り返し議論し、解釈を深めていく。この慎重なプロセスが、研究の信頼性を支えています。

しかし、研究チーム自身が認めているように、いくつかの限界もあります。第一に、参加者が単一の大学の1年生に限られている点です。中国北部の特定の教育環境における発見が、他の地域や年齢層にどの程度当てはまるかは不明です。

第二に、データがインタビューによる自己報告のみで構成されている点です。学生たちがどう感じたかは分かりますが、実際の読解パフォーマンスがどう変化したかを測定するデータはありません。また、ChatGPTとの実際のやり取りのログも分析されていません。学生の回想は貴重ですが、記憶は時に不正確で、自分をよく見せようとするバイアスもかかり得ます。

研究チームは、今後の研究では学習分析やシンクアラウド法(思考を声に出しながら読む方法)を組み合わせることを提案しています。これによって、より客観的で詳細なデータが得られるでしょう。

日本の英語教育への示唆

この研究は中国で行われましたが、日本の英語教育にも多くの示唆を与えてくれます。日本と中国は、英語を外国語として学ぶという点で共通の課題を抱えています。

まず、QAR戦略は日本の教室でも有効だと考えられます。日本の英語教育では、しばしば文法や語彙の知識が重視される一方で、戦略的な読み方を明示的に教える機会が限られています。QARのような枠組みを導入することで、学生は自分がどのレベルの理解を求められているのか、どのような読み方をすればよいのかが明確になります。

ChatGPTの活用については、日本でも関心が高まっていますが、具体的な活用方法についてはまだ模索段階です。この研究が示すように、ChatGPTを単なる翻訳ツールや答え合わせツールとして使うのではなく、思考を促す対話的なパートナーとして位置づけることが重要です。

日本の教室では、間違いを恐れて発言をためらう学生が多いという指摘がしばしばなされます。ChatGPTとの対話なら、人前で恥をかく心配がないため、より積極的に質問したり、自分の理解を試したりできるかもしれません。参加者たちが「ChatGPTに翻訳を頼んだ」「自分の答えと比較した」と率直に語っているように、AIは学習者にとって心理的に安全な練習相手になり得るのです。

ただし、この研究が示す限界も念頭に置くべきです。学生たちは、ChatGPTの回答が常に正確ではないこと、時に論理が不明確であること、文脈を考慮した質問の仕方を学ぶ必要があることを発見しました。日本の教育現場でAIを導入する際も、学生に「AIリテラシー」を教える必要があります。AIの出力を批判的に評価し、適切な質問を投げかけ、必要に応じて修正する能力です。

また、日本の大学では英語の授業が大人数で行われることも多く、個別指導の時間が限られています。ChatGPTのような技術は、この問題への一つの解答となり得ます。教師が全体に向けて授業を進めながら、個々の学生は自分のペースでChatGPTと対話して理解を深める。教師は、より高度な思考を促すファシリテーターとしての役割に専念できるかもしれません。

教育の本質を問い直す

この研究が最終的に問いかけているのは、教育におけるAIの役割だけではありません。読解とは何か、学習とは何か、理解とは何かという、より根本的な問いです。

従来、読解力の測定はしばしばテストスコアに還元されてきました。しかし、この研究が示すように、真の読解力の発達は数値では捉えきれない質的な変化を伴います。細部に気づくようになること、要約できるようになること、著者の意図を読み取れるようになること。これらは、学習者の内面で起こる段階的な変容です。

また、この研究は学習者の主体性を重視しています。学生たちは、ChatGPTの回答を鵜呑みにするのではなく、自分の答えと比較し、疑問を投げかけ、改善案を考えました。つまり、AIは知識の一方的な伝達者ではなく、学習者が能動的に関与する対話的なプロセスを支える存在なのです。

研究チームは、この姿勢を「対話的な読解パートナー」と表現しています。これは、教育におけるAIの理想的な位置づけかもしれません。AIは教師の代替ではなく、学習者と教師の間に入って、両者をつなぐ媒介者。学習者は24時間いつでもAIと対話でき、教師は学生の理解度をより正確に把握し、より適切な指導ができる。

今後への期待と課題

この研究は、多くの問いを残しています。例えば、長期的な効果はどうでしょうか。5週間の介入で見られた変化は、半年後、1年後も持続するのでしょうか。また、異なる熟達度の学習者で効果は異なるのでしょうか。初級者にとっても、上級者にとっても等しく有効なのでしょうか。

さらに、教師の役割についても考える必要があります。この研究では、学生が自律的にChatGPTを使用しましたが、教師がどのように関与すべきかについては、まだ十分に探究されていません。おそらく、効果的なプロンプトの作り方を教えたり、ChatGPTの限界について議論したり、学生の気づきを共有する機会を設けたりといった、新しい形の教師の役割が求められるでしょう。

技術的な課題もあります。この研究で使われたのは、ChatGPTの無料版(GPT-4o mini)でした。より高度なバージョンや、今後登場する新しいAIモデルを使えば、結果は変わるでしょうか。また、ChatGPTは日々進化しているため、この研究の知見がどこまで継続的に妥当かも不明です。

倫理的な問いもあります。AIに頼りすぎることで、学生の独立した思考力が損なわれることはないでしょうか。AIが生成した要約を見ることが、自分で要約する能力の発達を妨げることはないでしょうか。この研究の学生たちは批判的な態度を保っていましたが、すべての学習者がそうだとは限りません。

むすびに

Lu Zhangらによるこの研究は、AI時代の外国語教育について考えるための重要な材料を提供してくれました。ChatGPTとQAR戦略の組み合わせは、少なくとも短期的には、学習者の読解力の発達を多層的に支援できることが示されました。

しかし同時に、この研究は技術の限界と、学習者の批判的思考の重要性も浮き彫りにしました。AIは万能のツールではなく、適切に使えば強力な学習支援になるが、使い方を誤れば逆効果になり得る道具なのです。

日本の英語教育においても、AIの活用は避けて通れない課題となっています。この研究が示すように、重要なのは技術そのものではなく、それをどう教育的に意味のある形で統合するかです。戦略的な読解指導の枠組み(QARのような)と組み合わせ、学習者の主体性を尊重し、批判的思考を育てる。そうした総合的なアプローチが求められているのです。

35人の中国の大学生たちの体験は、私たちに多くのことを教えてくれます。彼らは、新しい技術に戸惑いながらも、それを自分の学習に取り込み、限界を見極め、より良い使い方を模索しました。教育の核心にあるのは、常に学習者自身の能動的な関与であり、技術はそれを支える手段に過ぎない。この当たり前のようで忘れがちな真実を、この研究は改めて思い起こさせてくれるのです。


Zhang, L., Xu, M., Huang, Y., Huang, Y., Wang, G., & Shen, X. (2025). Reading differently with ChatGPT: EFL learners’ use of Question-Answer Relationship strategy. Reading in a Foreign Language, 37(1), 1–21. https://doi.org/10.64152/10125/67520

 

By 吉成 雄一郎

株式会社リンガポルタ代表取締役社長。東京電機大学教授、東海大学教授を経て現職。コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ(英語教授法)、信州大学大学院工学研究科(情報工学)修了。専門は英語教授法、英語教育システム開発。 さまざまな英語学習書、英検、TOEIC 対策書、マルチメディア教材等を手がけてきた。英語eラーニングや英語関係の教材・コンテンツの研究開発も行う。全国の大学、短期大学、高専等で使われているeラーニングシステム「リンガポルタ」も開発した。最近ではAIによる新しい教育システムの開発にも着手している。

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