本書『AI×データ時代の「教育」戦略』は、AI(人工知能)とデータが織りなす新たな時代において、教育はどうあるべきか、そして、子どもたちに必要とされる「真の学力」とは何かを、教育現場の最前線に立つ著者が、長年の経験と最新の知見に基づき、読者に問いかける一冊です。
背景:社会構造の変化と教育の転換期
現代社会は、AIやビッグデータなどの技術革新により、かつてないスピードで変化しています。 このような変化の激しい時代において、従来型の「知識詰め込み型」の教育システムでは、社会の変化に対応できず、子どもたちの未来は危ういと著者は警鐘を鳴らしています。
グローバル化、少子高齢化、そしてAIの台頭といった社会構造の変化の中で、「教育」のあり方は、まさに転換期を迎えています。 特に、新型コロナウイルスのパンデミックは、教育現場に大きな変化をもたらし、オンライン教育が急速に普及しました。 文部科学省も、2020年4月以降、全国の大学に対してオンライン授業の実施を要請するなど、オンライン教育への移行を後押ししています。
オンライン教育は、場所や時間に縛られずに学習できるというメリットがある一方、対面授業に比べて学習効果が低いのではないかという懸念も挙げられています。 実際、オンライン授業で活用される主なプラットフォームである「Zoom」は、元々はビジネスシーンでの利用を想定して開発されたものであり、教育現場のニーズに最適化されているとは言えません。
教育現場におけるAIのインパクト
AIの進化は、教育現場にも大きな影響を与えています。 本書では、AIを活用した個別最適化された学習指導の可能性について、具体的な事例を交えながら紹介しています。
例えば、Amazon Goの技術は、コンビニエンスストアでの無人決済システムとして知られていますが、この技術を教育に応用することで、生徒一人ひとりの学習進捗に合わせた教材提供が可能になると著者は述べています。 具体的には、生徒がスマートフォンをかざすだけで、AIがその生徒の学習履歴や理解度を分析し、最適な教材を自動的に提示してくれるというシステムです。
さらに、ビッグデータや機械学習を用いることで、これまで以上に精度の高い「教育評価」が可能になることも期待されています。 従来の教育評価では、テストの点数や成績など、数値化しやすい指標に偏りがちでしたが、AIを活用することで、思考力や判断力、表現力など、数値化しにくい能力を評価できるようになる可能性があります。
「真のAI」と「道具のAI」
本書では、「真のAI」と「道具のAI」という2つの概念が登場します。 「道具のAI」とは、あくまで人間の指示に従って動くAIを指し、現在普及が進んでいるAIの多くがこのタイプに分類されます。 例えば、「将棋ソフト」や「囲碁ソフト」などが挙げられます。 一方、「真のAI」とは、自ら学習し、人間では思いつかないような発想を生み出すことができるAIを指します。
著者は、「道具のAI」はあくまで「真のAI」を実現するためのツールに過ぎないと述べています。 そして、AI時代に求められるのは、AIを「道具」として使いこなし、「真のAI」の開発に貢献できる人材であると主張しています。
「真の学力」を育むために
「AI×データ時代」においては、AIに代替されない、人間ならではの能力が重要になると著者は述べています。 では、AIに代替されない能力とはどのような能力なのでしょうか?本書では、「変化に対応する力」「問題解決能力」「創造力」「コミュニケーション能力」などが、AI時代に特に重要となる「真の学力」として挙げられています。
これらの能力を育むためには、「自分で目標を立てて学習する習慣」を身につけることが重要であると著者は述べています。 AI時代に求められるのは、受け身の姿勢ではなく、自ら学び続ける姿勢を持つこと、そして、AIを「道具」として活用しながら、新たな価値を生み出すことです。
本書の構成と特徴
本書は全5章で構成されており、各章の内容は以下の通りです。
第Ⅰ章:「オンライン教育」を活用する!
新型コロナウイルスの感染拡大によって、教育現場ではオンライン教育が急速に普及しました。 大学では、対面授業形式の授業をオンラインに移行するケースが多く見られました。 授業形態としては、リアルタイム型とオンデマンド型の二つに大別されます。 しかし、オンライン教育には、学生の学習意欲の維持や、教員側の負担増加といった課題も指摘されています。 本章では、オンライン教育を支えるAIやビッグデータの活用についても触れられています。
第Ⅱ章:AI×データ時代を的確に考える!
AI×データ時代とは、AIとデータが社会に浸透し、私たちの生活や行動様式に大きな変化をもたらしている時代を指します。 この章では、ビッグデータの誕生と、自動的に学習する最新のAIについて解説しています。 AIを活用した経済活動は拡大しており、Amazon Goの無人決済システムはその一例です。 AIは社会構造を大きく変え、教育のあり方にも変化が求められています。
第Ⅲ章:効果的・効率的な教育を問い直す!
本章では、AIによって教育におけるさまざまな課題をどのように克服できるのか、考察しています。 具体的には、従来型の「知識詰め込み型」の教育から、「いつでも」「どこでも」学べる教育への転換が必要とされています。 そして、これからの時代の教育には、受け身の姿勢ではなく、自ら学び続ける姿勢が重要とされています。
第Ⅳ章:「リアリティある学び」を取り戻す!
現代社会は、スマートフォンやSNSの普及によって、人々が「リアリティ」を感じにくい状況にあるとされています。 本章では、リアリティが欠如した近年の教育について、具体的な事例を挙げながら解説しています。 スマートフォンやSNSの普及による教育への影響についても考察がなされています。
第Ⅴ章:「超AI能力」を育成する!
「超AI能力」とは、AI時代を生き抜くために必要な能力のことです。 本章では、「超AI能力」とは何かについて解説し、AI×データ時代の「人間とAIの関係性」について考察しています。 「教育」は大きな転換期にあり、「真のAI」の登場によって「教育」の意味が根本から変わる可能性があると述べられています。
本書の特徴は、豊富な図表や事例を用いながら、AI×データ時代における教育のあり方について具体的かつ分かりやすく解説している点にあります。 また、教育関係者だけでなく、AI時代に生きるすべての人に向けて、これからの時代を生き抜くためのヒントが散りばめられています。
まとめ
本書は、AI×データ時代における「教育」のあり方について、多角的な視点から考察した一冊です。著者の教育現場やAI研究における豊富な経験に基づいた提言は、教育関係者のみならず、AI時代に生きるすべての人にとって示唆に富むものと言えるでしょう。特に、これからの時代を生き抜くために必要な「真の学力」とは何か、そして、それをどのようにすれば身につけることができるのかについて知りたいと考えている方に、ぜひおすすめしたい一冊です。