CALL授業の展開: その可能性を拡げるために

本書、『CALL授業の展開(その可能性を拡げるために』は、CALL(Computer Assisted Language Learning)授業の実践的な展開方法と、その効果的な活用について、豊富な具体例とともに解説した書籍です。著者の長年の教育経験とCALLに対する深い造詣に基づき、CALL授業を成功に導くための実践的な指針が示されています。

CALL授業の意義と必要性:

従来の語学教育においては、教師が一方的に教える講義形式の授業が一般的でした。しかし、学習者中心の授業が求められるようになり、学習者が主体的に参加し、個々のレベルや学習ペースに合わせて学べる授業形態が求められています。 このような背景から、ICTを活用したCALL授業が注目されています。CALL授業は、従来の授業形態では難しかった、個別学習協働学習自律学習を促進する効果も期待されています。

本書の構成と内容:

本書は大きく分けて3つの部に分かれています。

  • 第1部 基礎理論編
  • 第2部 授業実践編
  • 第3部 活用発展編

CALLの基礎を学ぶ(第1部):

まず、第1部「基礎理論編」では、CALLの基礎知識、歴史、教育効果、導入の際の注意点などが解説されています。 例えば、メディアは学習に影響を与えないというRichard E. Clarkの主張(1983)や、新規性効果ホーソン効果ピグマリオン効果といった教育心理学の理論も紹介されており、CALLを学ぶ上で重要な基礎知識を習得できます。 また、授業におけるCALLの位置づけCALLを利用した授業の内実学習評価を構築といった、効果的なCALL授業を行うためのポイントも詳しく解説されています。 さらに、教師がCALLを導入する際に陥りがちな問題点や、学習者の動機づけを高めるための具体的な方法についても言及されており、実践する上で参考になる内容となっています。

具体的な授業展開と活用事例(第2部、第3部):

第2部「授業実践編」では、CALL授業を実際にどのように展開していくのか、具体的な方法が、豊富な図表や写真とともに示されています。 例えば、教材の準備、授業展開の手順、学習活動の例、評価方法などが具体的に説明されています。さらに、著作権・肖像権に関する注意点や、ソフトウェア・アプリケーションの具体的な活用方法など、実践的な情報も網羅されています。

第3部「活用発展編」では、LMS (Learning Management System) やeラーニングといった、CALL授業をさらに発展させるための方法が紹介されています。 具体的なLMSとして、MoodleCEASの特徴や導入事例が詳しく紹介されており、それぞれのシステムのメリット・デメリットを比較検討することができます。 また、Podcastingを利用した効果的な学習方法や、インターネット上の教材・ツールの活用についても具体的に解説されており、CALL授業の可能性をさらに広げることができます。

本書の対象読者

本書は、以下のような方を対象としています。

  • CALL授業に関心のある、すべての英語教師
  • CALL授業をこれから実践しようと考えている教師
  • 既にCALL授業を行っているが、さらに効果的な方法を模索している教師

本書の特色

CALL授業の展開(その可能性を拡げるために』の特色は以下の点が挙げられます。

  • 豊富な具体例: 実際の授業風景や教材、ワークシートなどを用いることで、読者は具体的なイメージを持ちながら読み進めることができます。
  • 実践的な内容: 授業準備から評価まで、CALL授業を実践する上で必要な知識やノウハウが網羅されています。
  • 最新の技術動向: LMSやPodcastingなど、最新の技術やサービスを導入したCALL授業についても詳しく解説されています。

まとめ

『CALL授業の展開(その可能性を拡げるために』は、CALL授業を「これから始めたい」と考えている教師にとって、実践的な知識とノウハウを得られる最適な一冊であると同時に、既にCALL授業を行っている教師にとっても、新たな視点やアイデアを見出すことができる貴重な資料と言えるでしょう。 CALL授業を通して、学習者が主体的に**、そして効果的に語学を習得できるよう、本書がその一助となることを期待します。

By 吉成 雄一郎

東海大学教授。コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ(英語教授法)、信州大学大学院工学研究科(情報工学)修了。東京電機大学教授を経て現職。専門は英語教授法、英語教育システム開発。 さまざまな英語学習書、英検、TOEIC 対策書、マルチメディア教材等を手がけてきた。英語e ラーニングや英語関係の教材・コンテンツの研究開発も行う。全国の大学、短期大学、高専等で使われているe ラーニングシステム「リンガポルタ」も開発した。最近ではAI による新しい教育システムの開発にも着手している。